天体望遠鏡、下から見るか横から見るか?天体望遠鏡は何を買ったらいいのか?
目次
天体望遠鏡をこれから購入しようと考えている皆様。お勧めの天体望遠鏡を一緒に考えましょう。これを読み終わるまでは、絶対に買ってはダメ!です。
はじめに
天体観測歴50年?の九十九里星空の宿オーナーが考えるお勧めの天体観測機器は何か?を考えていきます。色々な考えがあるかと思いますが、あくまでも星が好きなアマチュアの話として、参考程度にしていただければ幸いです。お子さんに天体望遠鏡を買ってあげたい。興味があるので購入を検討している大人の方にも参考になると思います。
※初心者の方向けのわかりやすさを重視して書いていますので、専門家の方の視点では、「不正確だ!」とお叱りをいただくかもしれませんが、厳密に書くとその分わかりづらくなるので、その点はご容赦ください。
まずは、タイトルについて、、、、「天体望遠鏡下から見るか横から見るか?」どこぞの映画のタイトルみたいですが、天体望遠鏡は、横から見るタイプ、下から見るタイプがあるというお話から入ります。色々あるのは、わかったけど、お勧めは?というご質問になると思いますが、それは最後までお待ち下さい。
実は、天体望遠鏡選びはとてもむずかしいです。天体望遠鏡で見る場所(都会か?都会から離れたところか?)によって楽しめる対象が異なってきます。東京の自宅でも十分楽しめる天体観測対象もあれば、車に望遠鏡を積み込んで、空の暗いところまで遠出をしないと観測が難しい観測対象もあります。また、ちょっと慣れてくると、月のクレーターや美しい星雲・星団を写真に撮りたいという気持ちになるかもしれませんが、そうなるとハイアマチュアの世界にどっぷりとハマってきますので、このブログでは記念写真的な天体写真の撮影をする、までの話をさせていただきたいと思います。
※実際に天体望遠鏡で観測してみたい、触ってみたいという方は、九十九里星空の宿の天体観測体験をご利用ください。Airbnbの天体望遠鏡, 満点の星空の下で初めての天体観測@千葉県九十九里で体験のみのご提供もしています。
天体観測につかう機器の種類(天体望遠鏡、双眼鏡)
双眼鏡
双眼鏡で星を観るの?と思う方もいらっしゃると思いますが、私は双眼鏡でぼーっと、星を眺めているのが一番好きです。では、天体望遠鏡と双眼鏡、どのように使い分けているの?ということになりますよね?大雑把に言うと、双眼鏡は広い範囲の星空をお手軽に眺めるのに適しています。倍率7倍~10倍位のものが多いです。目で観るより見える範囲は狭くなりますが、星空を眺めるととてもたくさん星が見えます。時々話題になる彗星は、頭から長い尾の先まで眺めようとしたら、双眼鏡が一番良く見えます。月のクレーター等も見えますし、木星のガリレオ衛星なんかも見えます。
天体望遠鏡(反射望遠鏡)
じゃー、天体望遠鏡は?というと、双眼鏡より高い倍率で月、惑星(土星とか木星ですね)、星雲星団(アンドロメダ大星雲とか)を眺めたり、写真に撮ったりするのに適しています。重量もそれなりにあり、双眼鏡のように手に持って、、という訳にはいかず、かならず頑丈な三脚に乗せて使います(写真参照)。小さめな望遠鏡でも、お子様が一人で持ち出すのは大変かもしれません。その代わり、天体望遠鏡で眺める月のクレーターは、ものすごくきれいです。アポロ宇宙船で月に行ったアームストロング船長は、こんな眺めだったんだろうな~と思います。土星の環や、木星のシマシマも、図鑑の写真のように眺めることができちゃいます。ちなみに、この望遠鏡は、「横から観る」タイプの望遠鏡です。星からの光を望遠鏡の一番下(写真では右側)にある反射鏡(これを主鏡と呼びます。)で反射して、それを筒の中にある小さい鏡(これを副鏡と呼びます。)で90度折り曲げて、筒の外に導きます。鏡を使っているので、このタイプの望遠鏡は反射望遠鏡と言います。ちなみに、写真の望遠鏡の主鏡は、直径が20cmもあります。本体の重量だけで10kg.三脚も含めると40kg近くあります。もちろん、もっと小さいお手軽な反射望遠鏡もありますのでご安心ください。
天体望遠鏡(屈折望遠鏡)
もう一台の天体望遠鏡は、「下から観る」天体望遠鏡です。これは、望遠鏡の先(写真では左側)にあるレンズで光を集めて、下側(写真では右側)から覗きます。レンズで光を屈折させて光を集めるので、屈折望遠鏡といいます。
写真の望遠鏡は、レンズの直径が10cm。重量は6kgなので、上の望遠鏡よりは遥かに軽くて扱いやすいです。
次の疑問は、なんで、2つも持っているの???ですね?
答えは、観たり写真を撮ったりする対象によって、向き不向きがある、、、という事になります。。。
お勧めの天体望遠鏡を考える前に・・・
天体望遠鏡に色々な種類があるのは、わかったけど、じゃー、何を買えばいいの?気持ちはわかりますが、その前に、初心者が購入する天体望遠鏡でできる天体観測ってどーなの?というお話を聞いてください。
初心者が楽しめる天体観測とは?
図鑑やネットを見るととても美しい星雲・星団の写真や、神秘的な環のある土星、木星、月のクレーター等の写真が掲載されていますね?これから天体望遠鏡を買いたいと思っている皆さんは、自分の目で図鑑に掲載されているような美しい星雲・星団を観たい!と思っていらっしゃると思います。
これは、オリオン座の大星雲(M42)と呼ばれる星雲です。星雲とは、その名の通り、宇宙に浮かんでいるチリ=雲で、近くの星に照らされてボーと光っています。こんな美しい姿をご自身の望遠鏡で覗いたらどんなに感動することでしょうか!ところがっ!中学校の頃、初めて買った望遠鏡でこの星雲を覗いた時、私は「何これ??」と思うくらい貧弱の姿しか観えませんでした。なぜでしょうか?ちょっと話は長くなりますが、天体望遠鏡で星空を見る時に知っておくべき基礎知識(そんなに難しくないですよ)をお伝えします。
星座と星の明るさ(等級)について
星に等級(等級)があるってご存知でしょうか? 等級とは、星の明るさを表す数字で、数字が小さい程、明るい星であることを示しています。
左は、おうし座です。星座というと星占いを連想される方が多いと思いますが、星占いで使う星座はすべて実在しています。皆さんは自分の星座を観たことがありますか?自分はおうし座生まれなんだけど、実際のおうし座がどこにあるのか?わからない、、という方が大半だろうと思います。実は、天体観測を楽しむためには、主な星座がどこにあるか?を理解しておいたほうが良いのですが、それは、別の機会にご説明します。
さて、星の等級の話に戻ります。牡牛座で一番明るい星、アルデバランという星ですが、この星の明るさが1等級です。別の言い方をするとアルデバランは「1等星」というランクになります。
星空には、たくさんの星がありますが、すべての星の等級は決まっています。明るい星は、都会でも見ることが出来ますが、暗い星になればなるほど、都会では見ることができません。星の等級とその星の数は、概ねこんな感じです。
全天で一番あかるい星は、金星です。夕方か明け方にすごく明るい星を見つけたら金星だと思って間違いないでしょう。金星は、マイナス4等星としていますが、マイナスとは、ゼロ等星より、明るいことを意味します。
この図でお伝えしたいのは、都会で観れる星は2等星位までで、全天で68個しか無い!ということです。都会で観れる星が少ない理由は、都会の空の明るさです。都会には、多くの街灯、ネオンサイン等の明かりがあり、これが星を眺めるときは、とても邪魔になります。
ここ九十九里では、4等星から5等星位まで見ることができますので、都会で観れる星より10倍以上の星が輝いているのを観ることができます。
さて、ここで一つの答えがでます。私が初めてオリオン座大星雲を観た時に貧弱な姿だった理由は、都会で観たために、都会の明かりに星雲が紛れていた、、、ということになります。星雲や星団は非常に暗いです。先程のオリオン座大星雲は、4等星位です。アンドロメダ大星雲は、3.5等星位。なかなか都会の明るい空の下では、観るのが難しい事がわかります。では、都会では、天体観測は無理なのでしょうか?実は、月や惑星(火星、木星、土星等)は、都会でもまったく問題なく観ることができます。
都会でも楽しめる、月・惑星(火星、木星、土星)
月や、惑星は、とても明るいので、都会の明るい空の下でも楽しむことができます。
月(クレーター)
月は、とても簡単に観察することができますが、以下の点を頭に入れておいてください。
月は地球の周りを約1ヶ月で回っていてます。地球から観て太陽の方向にある時には、観ることができません。この時を新月と言います。逆に地球を挟んで、太陽の反対側に月があるときは、満月となります。新月を月齢ゼロと呼び、三日月は、月齢3、上弦の半月は、月齢7位満月は月齢15です。(十五夜ですね。)となります。一回りして、また新月になると月齢はゼロに戻ります。
この写真は、夕凪の望遠鏡で実際に撮影したものです。月は、三日月から満月の少し前までがよく見える時期で、満月の時に覗いても、クレーターは観えません。上の写真をみてわかるようにクレーターが見えるのは、月のかけ際付近なんです。なので、月が欠けていない満月のときは、クレーターはほとんど観えない、、、ということになります。月は、入門用の小型の望遠鏡でもこの写真位は観ることができます。実は、双眼鏡でもクレーターを確認できます。この辺は、後ほど書きますね。
惑星(火星、木星、土星)
惑星(火星、木星、土星)も都会で容易に楽しむ事ができます。土星はゼロ等級で、惑星の中では暗いほうですが、木星や火星は、マイナス2-3等級なので、都会でもすぐに場所がわかります。入門用の望遠鏡でも木星のシマや土星の環は簡単に確認することができます。
さて、いざ例えば木星を見ようとしたらどの方向にあるのだろう?と思うことになります。明るい星を片っ端から覗けば見つかる、、、というものではありません。惑星というのは、読んで時のごとく、惑う(まどう)星です。いつもこの星座の方向に見える、、ということではなく、空のあちこちの方向を動き回っています。星の探し方は、また後ほど書きますので、そちらを御覧ください。
2022年の惑星(火星、木星、土星)の見頃は、こちらを御覧ください。
二重星
二重星とは、肉眼で観ると一つの星が望遠鏡で拡大してみると2個以上の星が寄り添っている星を言います。
左の例は、北斗七星のミザールという星ですが、望遠鏡で50倍くらいにすると、右側の写真のように2つ(正確には3つ)に観えます。2つ以上の星が寄り添って輝く姿は、とても可愛らしいです。
ちなみに、二重星は、たまたま同じ方向に観えているだけで、実際はとても離れている事が多いです。
都会では観測が難しい天体観測対象 星雲・星団、彗星(ほうき星)
初心者向けの比較的安価な望遠鏡で、都会でも楽しめる天体についてお伝えしてきました。次は、都会では楽しむことが難しい天体観測対象について、お伝えします。先程書きました、星雲・星団は、とても美しいのですが、都会ではその美しさを堪能することは難しいです。
なぜ、都会で楽しむことができないのか?
その最大の理由は、「光害(こうがい)」です。光の害と書きますが、暗い天体を観るためには「光」は、まさに「害」なんです。
左の写真が「光害」の例です。夏のさそり座を撮影したものですが、右下が白っぽく明るく写っています。左上の方は、暗いですよね?この右下の白い光は、東京方面の「光害」なんです。東京には、たくさんの街灯や、ネオンサイン等多く、たくさんの光を空に向かって放っています。この光によって、淡い星の光がかき消されてしまうのです。初めの方で、東京で見える星が少ないという話を書きましたが、まさにこの光害によって、淡い星が観えなくなっているんです。
では、星雲・星団等の淡い光しか放っていない天体の美しさ堪能するためには、どうするか?簡単です。空の暗いところへ行けばイイんです。空の暗いところ=人工の少ないところ。東京等の大都市から離れたところです。インターネット上には、天体観測に適した場所を紹介しているサイトがありますので、ご参考になってください。
ちなみに、ココ九十九里町は、東京からは車で1時間位です。西側には、東京や東金の光害があり、先程の写真のように、すごく暗い星が見える、、とまでは行きませんが、東側は太平洋であるため、こちらの方向は真っ暗で、暗い星まで観ることができます。ご存知のように星は日周運動で動いていますので、東の方向に観えている時に天体望遠鏡を使って覗けば、十分その美しさを堪能できます。ということで、都会で楽しむのは少々難しい星雲・星団、ほうき星の紹介です。
星雲・星団
星雲・星団で何を思い浮かべますか? アンドロメダ大星雲、宇宙戦艦ヤマトが行ったイスカンダル星がある大マゼラン星雲、谷村新司の歌で有名なスバル(プレアデス星団)、ウルトラマンのふるさとのM78星雲、、等なんか夢がありますね。イスカンダル星は、架空の星ですが、これらの星雲・星団はすべて実在していて、天体望遠鏡で観ることできます。ここでは、初心者が比較的小さな天体望遠鏡で眺めても楽しい星雲・星団をご紹介します。
オリオン座の大星雲。オリオン座のお腹の少し下?あたりにあり、肉眼でもなんか星とちょっと違うぞ?という感じに見えています。写真は、鳥が羽を広げて左を向いて飛んでいるような姿。ピンク色に輝いていてとてもきれいですね。望遠鏡で眺めると、残念ながら色はわかりませんが、それでもモヤモヤと雲のような淡い光が複雑に入り組んでいる様子がわかります。写真ではわかりませんが、中央付近にある星に照らされて淡く光っています。初心者用の比較的安価な望遠鏡でも中央が明るく、周りのモヤモヤした淡い雲を確認することができます。
おうし座のスバル(プレアデス星団)です。星団とは、星が固まっている部分のことを言います。スバルは、小さな望遠鏡でも、100個以上の星が天体望遠鏡の視野の中で輝いている姿を眺めることができて、飽きることがありません。
こと座の惑星状星雲です。ドーナッツ星雲とも呼ばれます。小さな星雲ですが、小さな望遠鏡で観ると「なんか星じゃないかも」位のイメージでパットしませんが、大きな望遠鏡で眺めると、この写真のイメージのようにドーナッツがポッカリと宇宙に浮かんでいる姿がわかり、とても神秘的な眺めです。
大きな望遠鏡、という言葉を使いましたが、望遠鏡の性能をそろそろお伝えしたほうがいいかもしれませんね。
次の章では、いよいよ天体望遠鏡選びを始めたいと思います。
いよいよ天体望遠鏡選びのお話です
天体望遠鏡の性能は、この5つで決まる!
いきなり天体望遠鏡選びの話をするまえに、楽しめる天体についてご紹介をしてきました。実は、どんな対象を主に観たいか?によって、選ぶ望遠鏡が変わってきます。ここでは、望遠鏡の性能や使い勝手は、この5つで決まる!というお話です。
望遠鏡の構造のお話
左の図は、屈折望遠鏡の構造を説明しています。VIXENさんの説明資料からの抜粋させていただいています。この図には、天体望遠鏡の選択する際に考えるべきポイントが書かれています。
1)対物レンズの有効径 屈折望遠鏡は、レンズで光を集めます。そのレンズの直径です。有効径6cmとか、100mmのような表現をします。
2)接眼レンズ 天体望遠鏡で対象を拡大するためには、図の部分(望遠鏡を覗くところ)にも小さなレンズが必要で、これを接眼レンズ(アイピース)と呼びます。
3)焦点距離 レンズ面から覗くところ(左図では接眼レンズと書かれているところ)までの距離です。f=800mmと書かれていれば、レンズ面から接眼レンズまでの長さが800mm = 80cmあるということになります。
4)架台と三脚 天体望遠鏡を搭載するための三脚と望遠鏡を三脚に取り付けるための台座です。
基本的に、この4つの部品の性能で天体望遠鏡の能力が決まります。あれ、5つじゃないの?と言われそうですね。5つめは、ここには表せきれない「質の良さ」があります。
これら5つの要素について、次に説明しますね。
対物レンズの有効径
光を集めるためにレンズを使っている屈折望遠鏡の場合、有効径とは、レンズの直径となります。光を集めるために鏡を使っている反射望遠鏡の場合は、鏡の直径です。では、この有効径が違うと何が違うのか?
答えは、有効径が大きいとより多くの光を集めることができるので、より暗い対象をはっきりと観ることができるようになる、、ということになります。下の表は、有効径とどれくらいの光を集められるか?を示しています。
有効径 | 集光力 | 分解能 | 極限等級 | 有効最高倍率 |
6cm | 73倍 | 1.93秒 | 10.1等級 | 60倍 |
8cm | 131倍 | 1.45秒 | 11.3等級 | 80倍 |
10cm | 204倍 | 1.16秒 | 11.8等級 | 100倍 |
15cm | 459倍 | 0.77秒 | 12.7等級 | 150倍 |
20cm | 816倍 | 0.58秒 | 13.3等級 | 200倍 |
集光力:人間の目の何倍の光を集められるか?
分解能:どれだけ細かく見えるか?
極限等級:どれだけ暗い星が見えるか?
有効最高倍率:その望遠鏡で使える最高倍率の目安
倍率に目が行きがちだですよね?でも倍率は二の次です。例えば、有効径6cmの望遠鏡で使える有効最高倍率60倍ですが、これくらいの倍率でも木星のシマシマや土星の環は観ることができますし、月であれば、視野一杯のクレーターだらけの月を眺めることができます。また、あとで書きますが、気流の影響で倍率を高くしてもモヤモヤするだけでよく観えない夜も多いので、あまり倍率は気にしない方がいいです。逆に、1万円位の望遠鏡で「300倍でよく見える❣」なんてキャッチフレーズが書いてある天体望遠鏡は絶対に買ってはいけません。
倍率より大切なのは、集光力です。みなさんが真っ暗闇の中で、光をともして周りを見た時、はっきり観るためには、より多くの光で周りを照らす事ですよね?いくら高い倍率で眺めても暗ければよく観えないんですね。有効径6cm望遠鏡でも、人の目の73倍の光を集められます。極限等級は、10等級ですので、肉眼より遥かに多い星を眺めることができます。
接眼レンズ (アイピース)
接眼レンズ(アイピースと呼びますね)は、左のような形をした高さ数センチ程度の小さなレンズです。この小さなレンズを望遠鏡ののぞき穴に取り付けて、覗き込みます。
アイピースにも焦点距離という考え方があって、焦点距離20mmのアイピースとか、焦点距離8mmのアイピースと言うような呼び方をします。
このアイピースの焦点距離と対物レンズの焦点距離で望遠鏡の倍率がきまります。その辺のからくりは次に説明します。
対物レンズの焦点距離
焦点距離は、3つの点で重要です。ひとつ目は、倍率を決める要素であること。ふたつ目は、望遠鏡の長さに関係していること。3つ目は、見やすさに関係していること、です。
倍率は、何できまるか?
倍率は、以下の計算で決まります。
倍率=焦点距離 / 接眼レンズの焦点距離
例えば、対物レンズの焦点距離が800mm (80cm)の天体望遠鏡に、焦点距離20mmのアイピースを取り付けた場合、
倍率=800mm / 20mm = 40倍
となります。焦点距離 4mm のアイピースを取り付ければ、
倍率=800mm / 4mm = 200倍
となります。
望遠鏡の長さが決まる
もう一度、天体望遠鏡の写真を思い出していただきたいのですが、対物レンズは、望遠鏡の筒の先頭、アイピースは、筒の末端にあります。
焦点距離は、筒の先に取り付けられている対物レンズからアイピースまでの距離ですので、ご覧いただくとおり、望遠鏡の長さ、がほぼ焦点距離の長さになる、ということになりますね。
実は、望遠鏡の種類によっては、筒の長さが、焦点距離の半分程度の天体望遠鏡もありますが、その辺は、また別の機会にご説明します。
焦点距離で見やすさが決まる?
実は、焦点距離が長い望遠鏡の方が、大体見やすいです。不正確な書き方をしました。厳密には、F値が大きいほど見やすい、が正解です。F値とは、対物レンズの焦点距離を対物レンズの直径で割った値です。カメラに詳しい方は、レンズのF値、という言い方をすると思いますが、それと同じです。
前述の例えば、焦点距離が800mmで有効径60mmの天体望遠鏡のF値は、
F=対物レンズの焦点距離 / 有効径 =800/60=13
となります。
なぜF値が大きい方が見やすいか?というと、ピントを合わせやすい事、一般的にレンズの設計に無理がないため性能が良い、、ということになります。最近の望遠鏡の場合、屈折望遠鏡でF8くらい、反射望遠鏡では、F6位が多いですが、この数字より大きめの望遠鏡の方が初めて使う天体望遠鏡としては、使いやすいのではないかな?というのがオーナーの持論です。(かってな思い込み、、とも言います。)
架台と三脚
さてさて、残るは2つです。架台と三脚のお話です。架台と三脚は、天体望遠鏡を支える非常に重要なパーツで、高級なものですと架台と三脚だけで、うん十万以上するものもあります。
なぜか重要か?といいますと理由は主に2つです。
その1.天体望遠鏡は非常に高い倍率で対象を拡大して覗きこみます。そのため、風に吹かれたりすると望遠鏡がゆらゆらと揺れてしまい、天体観測どころではなくなってしまうということです。したがって、まずは頑丈なものである必要があります。
その2.自動追尾ができるものがある。地球は自転していますので、星を覗いていると、日周運動で思いのほか早いスピードで動いています。100倍位の倍率で覗いていると、望遠鏡の視野の中を星が動いていき、やがて視野から外れてしまいます。高級な?架台は、日周運動に合わせて星を追いかけてくれます。安価なものは、手作業で追いかけますが、この手作業を容易にするために水平方向(右左)と垂直方向(上下)に動かす「微動装置」がついていて、ノブを回すと少しだけ視野を動かすことができるようになっているものがあります。
ここで、また買ってはいけない望遠鏡ですが、きゃしゃな架台&三脚でこの「微動装置」がついていないものはダメです。4-5000円位で売っている天体望遠鏡は、微動装置がついていない、きゃしゃな架台&三脚とセットになっていることが多いのでご注意ください。
望遠鏡の質とは?
最後に望遠鏡の質のお話です。いままでお伝えしてきた4つの要素がまったく同じ天体望遠鏡でも、性能はピンからキリまであります。例えば、対物レンズの有効径6cm、焦点距離480mm、5mmのアイピースをつけて倍率96倍で覗いた時、1万円位から購入できる望遠鏡もあれば、望遠鏡本体だけで15万円位するものもあります。
安価な望遠鏡と高価な望遠鏡の何が違うか?主に、以下のような部分が異なります。
- 光学性能 レンズや反射鏡等の光を集めるためのパーツが高性能なものを使っているため、よりクリアにはっきりと見える。
- 作りが頑丈 架台&三脚の所でお伝えしましたように、望遠鏡は高倍率で使用するので、作りの精度が悪いと、ぐらぐらしたり、しっかりとピントが合わなかったりします。
- その他機能性 日周運動に合わせて星を追いかけてくれたり、星を自動で導入してくれたりできるものもあります。
ただ、初めての天体観測のための望遠鏡については、上記の質は、「ほどほど」で大丈夫です。高性能を追い求めると、わずかな性能向上のために、数倍のお金が必要になってしまいます。
望遠鏡の性能&使い勝手と観測対象の関係
ここまでで、天体観測の対象(何が見えるの?)ということと、望遠鏡の性能&使いがっての話をしてきましたが、では、何を見るときにどんな望遠鏡が適しているか?をまとめます。
月、惑星、二重星を観ることに適している天体望遠鏡は?
月、惑星、二重星は、都会の明るい空でも楽しめる天体です。特に月や木星は、毎日その姿を変えるので、毎日でも楽しめます。私は、中学の夏季休暇の課題として、「木星の衛星の毎日の動き」をスケッチして、レポートとした記憶があります。
これらの天体は、対物レンズ有効径6cmで、20倍~80倍位の倍率で十分に楽しめます。初心者向けの天体望遠鏡には、低倍率用と高倍率用複数のアイピースが付属していてることが多く、大体この範囲に収まります。
具体的には、有効径6cm 焦点距離 480mmの天体望遠鏡に、焦点距離20mmと6mmのアイピースが付属しているといった感じです。
この場合得られる倍率は、
焦点距離20mmのアイピースを取り付けると 480mm / 20mm=24倍
焦点距離6mmのアイピースを取り付けると 480mm / 6mm=80倍
となります。80倍位でこの写真のような月を眺めることができます。
星雲・星団を観ることに適している天体望遠鏡は?
星雲・星団はお伝えしたように、とても淡い対象です。暗い天体を観るためには、集光力いのち!です。逆の高い倍率はあまり必要はなく、20-40倍位の倍率で十分です。一部の星雲・星団は、もっと高い倍率が必要になるものもありますが、それらは、更に暗い天体なので、初めての方がにとってはあまり面白い対象ではありません。
で、求められる性能ですが、最低でも有効径10cmは欲しい所です。もちろん前述の6cm位の望遠鏡でも楽しめる対象はあります。6cmの望遠鏡の集光力は、肉眼の73倍。10cmの望遠鏡の集光力は、肉眼の204倍です。この差は、大きい!です。
一方で、有効径10cmの天体望遠鏡では、月、惑星、二重性は見れないの?とご質問をいただきそうですね?安心してください「よく見えます」では、なぜ有効径6cmの天体望遠鏡の話をしたのでしょうか? それは、値段と手入れのしやすさ、、に関係しています。
初心者向け万能な天体望遠鏡はないのか??
天体望遠鏡を選ぶとき、良く見えるものが欲しいのは当たり前と思いますが、やっぱりお値段が気になりますね。いいよ天体望遠鏡選びの最終ステージです。どれくらいの値段でどんな望遠鏡が購入でき、どんな見え方&使い勝手になるか?をお伝えします。
天体望遠鏡選び。あなたらならどれを選びますか?
」入門用の天体望遠鏡として、最低限欲しいスペックをまとめます。
- 有効径 最低でも6cmは欲しい。これくらいで月、惑星(火星、金星、木星、土星)、二重星はばっちり楽しめます。ただし、星雲&星団を観るときには、やっぱり10cmは欲しいとなります。
- 倍率 付属のアイピースに低倍率用と高倍率用の二つは付属していること。後からアイピースだけ買い足すことはできますが、まずは標準のセットで観たいですよね?で、倍率ですが、低倍率用は、20-30倍程度。高倍率用は、80-100倍程度が望ましいです。あまり高い倍率ですと、のぞき続けるのがしんどくなります。
- 架台&三脚 日周運動に合わせて自動的に星を追いかけてくれるものや、対象に向けて自動的に天体望遠鏡を向けてくれるような優れもの架台&三脚もありますが、それなりに高価です。まずは、手作業で星を追いかけてみてください。そのためにも、微動装置がついていることが必須アイテムです。また、三脚はなるべくがっしりしていることが重要です。
- 利用者の年齢 今までお話してませんでしたが、小学校低学年のお子様は、天体望遠鏡をひとりで扱うのは非常に難しいと思ってください。「組み立て簡単!とても軽くてお子様でも使えます」というキャッチフレーズの望遠鏡でも難しいです。今まで、多くのお子様に九十九里星空の宿夕凪の天体観測体験を提供してきましたが、小さなお子様は、天体望遠鏡を片目で覗くのが非常に難しいようです。右目と左目の間(鼻の上)で覗こうとするお子様が多いです。なんとか、片手で固めを隠してもらって、のぞいてもらいますが、自分ひとりで対象を導入する事ができないお子さんが多いのでは?と思います。
以上を踏まえて、市販の望遠鏡を調べてみましょう。
1万円以下の天体望遠鏡
「SVBONY SV25 天体望遠鏡 屈折式 望遠鏡 高倍率 60mm大口径 専用三脚付き」です。お値段は、アマゾンで、6,980円(税込み、送料込み)でした。有効径6cm、付属のアイピースで倍率は、47倍と21倍です。
このクラスの天体望遠鏡は、「150倍で良く見える!」とかインチキな?うたい文句を使っているものがある中、実用的な倍率のアイピースが付属しているのは、良心的です。
ただし、ご覧いただくとわかりますが、この三脚には、微動装置がありません。おそらく、47倍で使用したとしても、星の導入や星の移動を追いかけるのはとても大変で星を眺めている時間より、星を視野へ導入するのに時間がかかると思います。
このクラスの天体望遠鏡は、小学校低学年のお子様にせがまれて、「とりあえず買ってみようか?」というときに購入するレベルです。必ず、ご両親のどちらか(もしくは中学生くらいのお兄さん)が一緒に対象を観て楽しむ事が必要だと思います。47倍でも月のクレーターや、惑星の模様はある程度楽しめます。ただし、レンズの質(性能)が、天体観測用としてはギリギリの性能です。月や惑星を観た時に、「なんか紫色のもやもや」が一緒に見えると思います。これは、色収差と呼ばれるレンズの特性で、このクラスの天体望遠鏡に使われているレンズでは、必ず発生してしまうので、その点は妥協が必要です。
1万円から3万円位の天体望遠鏡
Vixen 天体望遠鏡 スペースアイ700 屈折式 口径70mm 焦点距離700mm 経緯台式。お値段は、アマゾンで18,855円。倍率は、付属のアイピースで倍率は、35倍と117倍です。
この天体望遠鏡の架台には、ちゃんと微動装置がついています。三脚もそこそこがっちりしているので、100倍を超える倍率でも安定して覗くことができそうです。キャリングバッグが付属とのことですので、キャンプに持っていきやすそうです。
気になる点は、やっぱりレンズの性能です。色収差があるレンズですので、「なんか紫色のもやもや」が一緒に見えると思います。また、重量が7kgほどありますので、取り扱いが少々大変になってきます。実は、天体望遠鏡は高性能になればなるほど、重くなります。
3万円から5万円の望遠鏡
このクラスになると、選択肢が増えてきます。
Vixen 天体望遠鏡 ポルタII経緯台シリーズ ポルタIIA80Mf
お値段は、アマゾンで36,800円。倍率は、付属のアイピースで倍率は、46倍と144倍です。
有効径は、8cmありますので、星雲や星団もソコソコかと思います。
この天体望遠鏡の架台には、ちゃんと微動装置がついています。実は、この架台&三脚は結構定評があり、使いやすいです。将来別の望遠鏡にグレードアップする場合でもこの架台&三脚は手元に置いておくと何かと重宝します。重量はコミコミで、9kg近くなると思います。
同じく色収差があるレンズを使っています。「紫色のもやもや」が気になると思います。
さて、見た目が変わりましたね。今までご説明した望遠鏡はすべて屈折望遠鏡で、下から見るタイプ。
Vixen 天体望遠鏡 ポルタII経緯台シリーズ ポルタIIR130Sf
お値段は、アマゾンで45,599円。倍率は、付属のアイピースで倍率は、33倍と103倍です。架台は、上の望遠鏡と同じで、微動装置付きです。
この望遠鏡は、反射望遠鏡です。初めて出てきました!望遠鏡の下側にある鏡に反射した像鏡筒の途中にある二つ目の鏡でもう一度反射させて、横から覗くタイプです。
この望遠鏡の有効径は、なんと13cmもあります。集光力は、344倍もありますので、月、惑星だけでなく、星雲&星団も良く見えるようになります。
いままの望遠鏡で問題となっていた、「色収差」は、反射望遠鏡にはありませんので、紫色のモヤモヤに悩まされることがなく、くっきりとした映像を眺めることができます。
なんかとってもいい感じの反射望遠鏡ですが、考慮すべき点が二つあります。
その1.光軸調整 反射望遠鏡は光軸調整と呼ばれるめんどくさい作業が必要です。光軸がキチンと調整されていないと、望遠鏡の性能を100%発揮できずに、ちょっとゆがんだ?イメージになってしまいます。しかもこの調整は慣れないと大変(慣れても結構大変!)という問題があります。もちろん、メーカーにメンテナスをお願いすることはできますが、そこそこの出費になってしまうと思います。
その2.観測までに温度になじませる必要がある 反射望遠鏡でもう一つ考慮すべきことは、観測までに外の気温になじませる必要がある、、という事です。例えば冬の季節、家の中に保管されている望遠鏡はぬくぬくと温かい環境で保管されています。一方で、外は寒空。。。この外の気温に天体望遠鏡をなじませるためには、観測を始める1時間程度には、外に出しておく必要があります。なじませずに、観測を始めてしまうと、望遠鏡で覗いた像が安定せず、なんかモヤモヤに悩まされることになります。
実は、この2つの考慮すべき問題があるために、「初心者には、反射望遠鏡は勧めない」という人が多いです。ただし、反射望遠鏡には、屈折望遠鏡に無いメリットが有り余ってます。有効径の大きい天体望遠鏡が安価に手に入るということです。
初心者にとって、飽きないためには、「よく見える」ことが大切ですよね?屈折望遠鏡は、色収差でモヤモヤしり、有効径もはるかに小さいため、どうしても反射望遠鏡に比べると見劣りしてしまいます。
もし、あなたが物をいじくるのが好きで、プラモデルを作ったり、ミニ四駆をチューニングしたりするのが楽しいと感じるのであれば、反射望遠鏡の光軸調整も苦にならないと思います。ぜひ、チャレンジしてみてください。
5万円以上の天体望遠鏡(自動導入式という選択肢)
架台についてもう一度・・・経緯台式と赤道儀式
ここまでで、ご紹介した望遠鏡は、すべて経緯台式の望遠鏡です。架台と三脚のパートで説明しましたように、望遠鏡を搭載する足回りには、経緯台式と赤道儀式があります。経緯台式は、取扱がとても簡単で、上下方向(高度)の調整と左右(水平方向)の調整だけで天体を導入します。設置が楽で、観たい場所に移動して、すぐに使用ができるようになります。ただし、星の日周運動に合わせて星を追いかける機能がないので、対象を導入後数分で、視野から外れてしまいます。その度に、上下、左右の手で調整をして星を追いかける必要があります。星がどんどん逃げていってしまうので、写真撮影に経緯台式の架台を使用するのは、適していません。
赤道儀式は、星の動きに合わせてモーターが自動で星を追いかけてくれます。星は、天の北極(だいたい北極星のあたりにある)を中心に円周運動をしているように見えますので、赤道儀の移動軸を天の北極に合わせて置く必要があります。この手順は結構手間で、経緯台式は、設置した場所ですぐに観測が開始できるのに対して、赤道儀式は、場所を決めて赤道儀の回転軸を天の北極に合わせる曲軸合わせをしてからでないと、観測を開始できません。北極星の見える所であれば、慣れれば数分でできますが、マンションのベランダ等で観測する場合、北極星が見えないことが多いかと思います。(北向きのベランダって少ないですよね。)一度設定してしまえば、星を自動的に追いかけてくれるので、天体写真にも適応します。また、自動導入式の架台も最近は、安価に提供されています。これは、架台をきちんとセットすれば、観たい星を自動で視野に導いてくれるというスグレモノです。夢のような望遠鏡ですが、設置作業に更にひと手間必要となりますので、じっくり観たい時向けの架台となります。
以上の理由で、私は最初の望遠鏡は経緯台式を推奨しています。観たい時にぱっと観れる事、、、が大事と思うからです。周りが開けている所で観測するのであれば、望遠鏡を一度セットしたら、場所を変える必要はありません。一方で、ベランダや狭い空き地?等で観測する場合、見えている星に合わせて、望遠鏡を移動させる必要があるかもしれません。赤道儀式だと望遠鏡を移動させる度に、曲軸合わせが必要になりますので、移動は面倒です。また、将来写真を撮りたいと思って、赤道儀を購入したとしても、よくできた経緯台を所有していると、ちょっと観てみたい時に重宝しますので、私は赤道儀と経緯台を使い分けています。
肝心のお値段ですが、5万円以下でも赤道儀の望遠鏡は販売しているようですが、あまりお勧めしません。赤道儀には高い精度が求められるので、安価な赤道儀はデキが悪い?可能性があるからです。それでも赤道儀が欲しい方には、最近流行りの自動導入式機能のある望遠鏡がいいかもしれません。
自動導入式架台
こちらの望遠鏡、自動導入式の架台に口径13cmの反射望遠鏡を搭載したモデルです。スマートフォンからコントロールするので、スマホユーザであることが前提で、Wi-Fiについての知識が多少必要かもしれませんが、きちんと設置すれば、あとは観たい天体をスマホで指定するとジーコジーコと自動で動いて、対象を導入してくれます。
だいたい5万円前後で販売しているようです。
実際に観測を開始する前に、架台のアラインメントという設定が必要ですが、慣れれば10分位で設定できるものと思います。
反射望遠鏡が搭載されているので、ご説明した光軸合わせを定期的に行う必要がありますが、口径13cmもありますので、とても良く見えると思います。光軸調整の方法は、「反射望遠鏡 光軸調整」で検索すると山程事例が出てきます。面倒くさそうで最初は理解できないと思いますが、やってみると意外となんとかなります。
この望遠鏡、オーナーもちょっと気になっている望遠鏡の一つです。
“天体望遠鏡、下から見るか横から見るか?天体望遠鏡は何を買ったらいいのか?” に対して1件のコメントがあります。